ペネロペの下書きブログ

ペネロペの下手な文章のさらに下書きです。ごめんなさい。

スポンサーサイト

スポンサー広告


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

イダー9

未分類


 イダー9

 3人で鉄橋を渡る。

「コラはまた来そうね。」

 少女の呟く声が、風に混ざって聞こえる。

「しばら訓練は控えた方がいいわね。」

 ミニスカートを風になびかせながら振り向いて笑う。

 その笑顔から、先ほどの破壊力は微塵も感じられない。

「あの、」

 恐る恐る声を掛ける。

「先ほどは、ありがとうございました。」

「いいのいいの。仕事と趣味だから。」

 趣味。

 確かに楽しそうに言う。

 あの一瞬で他種族を消し去った破壊力が、趣味。

 肩に担いだガトリング銃を握る。

 とても、かなわない。

「あら、お待ちかねの様ね。」

 橋の向こう側、険しい顔をした3人が見える。

 タリスクとエレン、ホース。

「大丈夫?」

 エレンの声は心配というより、不機嫌そうだ。

「はい、どうにか。」

 軽くうなずくと、後ろの男に視線が移る。

「元気そうね。」

 不機嫌の度合いがます。

「お蔭様で。」

 にっこり笑って、エレンの不機嫌を気にしていない。

「で。」

 私の前の少女。

「何しに来たの。」

 不機嫌一色の声。

「あら。」

 にっこり、最高の笑顔。

「お友達をたずねて。うふ!」

 エレンのこんな顔は初めて見る。

 眉間のしわを寄せた顔は、殺気すら感じられた。

「立ち話もなんだから、はいりましょ!ここは寒いわ!」

 発着場に走っていく。

 全然寒そうに見えない。

「どうしたんですか、エレン。」

「・・・なんでもないわよ。」

 コラを思わせるような長い足でつかつかと後を追う。

 とても、なにも無いようには思えない。

 肩に手が置かれる。

「すぐに判るさ。」

 タリスクの声は笑いに近かった。

「覚悟しとけよ。今日は荒れるぞ。」

「誰なんですか、彼女。」

 小走りのタリスクが、振り向かずに答えた。

「ぞくちょー!」


 発着場の一室。

 酒保となっている、この部屋の片隅。

 空気の張り詰め方は尋常ではない。

 発信源は2人。

 エランと少女だ。

 数名が、遠巻きに眺めている。

 ある者は腫れ物に触るように。

 ある者は興味深い見世物を待つように。

「世紀の一戦ですね。」

 楽しそうに男がささやく。

「あのぅ。」

「はい?」

 こっちを向いた男の顔は、すでにうっすら赤かった。

「まだ、お名前を伺ってないんですが。」

「あぁ、失礼。」

 頭をかく仕草が芝居がかっってみえた。

「私はクァーズといいます。ジェレミーさんですね。」

「はい。先ほどはどうも。」

「同じギルドなんですから、気にしないで。」

 笑いながらジョッキを傾ける。

「で、彼女は?」

 声を潜める。導火線に火をつけないように。

「彼女は、ベラードの種族長、ストロチナヤさん。もとはここのギルドマスターだったんです。」

 種族長。

 ノバスのベラードのリーダー的存在。

 他種族との折衝から戦闘指揮、自主族の揉め事の解決と業務は多岐に及ぶ。

 選挙で選出され、指名手配などの制裁権ももつ。

「な、なぜここに?」

「ま、おいおいお話しますよ。」

 楽しそうにジョッキを傾ける。

「で!」

 重いジョッキがテーブルに叩きつけられる。 

「お忙しいはずのあんたが、何故ここにいるのかしら!」

 導火線に火がついた。

「久しぶりにあなたと呑みたくなって。」

 天使の笑顔で、ジョッキをかかげる。

「人にギルドマスター押し付けて、『あたし一人がいいから』って!」

「あー、あの時は他種族相手にヌメロスなんかによく行ってたから。」

 小さな手がジョッキをあおる。

「迷惑かけたくなかったしね。」

「だれも迷惑なんて思って無かったわよ!」

 ジョッキを凄まじい速さで空にする。

 呑んでいる間だけ、向かいの少女を睨めない。

 それが幸いなのか、どうなのか。

「一言あれだけで、行方不明!たまにメールでアク領だの、コラ領だの!残された者がどう思うか!」

「大丈夫よ。そうそうやられたりしないわ。」

 エレンの空のジョッキに、どこからか取り出した瓶から何かを注ぐ。

「下から持ってきたの。美味しいわよ。」

「あなたねぇ!」

「みんなもどう?美味しいわよ!」

 銃口がこちらに向けられた気がした。

 クァーズと顔を見合わせる。

「こいよ、防御隊長。」

 タリスクがテーブルに向かう。

「ランカー二人が、イダーの呑んだくれを訪ねてきたんだ。なんかあるんだろ?」

「いやぁ、隠すつもりはなかったんですが。」

 相変わらず、芝居がかった仕草で頭をかく。

「隠されてるつもりもねぇよ。」

 クァーズをつつく。

「なんでしょう?」

「防御隊長って?」

「ま、下っ端って所ですね。」


 防御隊長。

 副族長・攻撃隊長・支援隊長とともに、種族長の補佐につく。

 種族長に選任されるか、立候補した種族長候補者が任につく。

 彼らを総称しランカーと呼称する。


「ま、腐れ縁で引っ張られまして。」

「下っ端の腐れ縁のはいいから。」

 殺気がこちらを向く。

 少しだけ、クァーズから離れる。

「用件は?あなたまで呑みにきたってんじゃないでしょうね。」

 笑顔が少し引きつっている。

「えーと、いいですかナーヤ?」

「あ、あたしから言うわ。」

 クァーズをジョッキで制する。

 目が変わっていた。

「ギルメン全員、下におりて。やって欲しい事があるの。」

 ジョッキが静かに置かれる。

「聖戦でね。」




 
スポンサーサイト

イダー 8

未分類


 
 イダー 8

 なんとか、口に運ぶ。

 痛い。

 背中の傷が激痛を伴って癒される。

 暫くして、痛みが引くまで、動けなかった。

 頭を上げる。

 白い、イダーの地面に点々と赤い道。

 私のものか、タリスクのものか。

 やがて雪に覆われて、元の白さを取り戻すだろう。

 身体を持ち上げると、眩暈がした。

 まだ、出血した分が戻っていないのだろうか、視界が暗い。

 バックパックから一瓶とりだす。

 のんびり回復を待っていられない。

 次の敵がいつくるかも分からない。

 足元に小瓶を置いて立ち上がる。

 まだ、あちこちに痛みがあるが、動きは戻った。

 見渡すと、山陰以外に視界をさえぎる物もない。

 銃声や怒号も聞こえない。

 銃のセーフティをONにして歩き出した。

 赤い道を。


 山陰を回り込む。

 いるはず、だった。

 3人が。

 血はここで途切れている。

 少し大きな血溜まりを残して。

「タリスク、エレン。返事してください。」

 無線に呼びかける。

 返事が無い。

 銃を構えた。

 何か、あったのだ。

「逃げて!」

 銃声と同時だった。

 目の前を何かが横切る。

 あわてて飛びのく。

 再び銃声。

 肩の装備が弾ける。

 銃声のした方を見る。

 片膝で大型の銃を構えている。

 そこに、確かに誰もいなかったのに。

「コラよ!逃げて!」

 エレンの声が無線から響く。

 走った。

 敵の銃から逃れるにはジグザグに走るのが基本だ。

 どこかで習った、そんな言葉がよみがえる。

 転がるように、走った。

 右肩に熱い感触。

 何とか走った。

 背中。

 走った。

 橋が見えた。

 これを渡ればべラードの発着場だ。

 右足。

 足が前に出ない。

 雪に埋もれた。

 後ろから雪を踏む音が聞こえる。

 埋もれたまま、振りかえ、られない。

 激痛が、動きを止める。

 雪を踏む音が止まった。

 そして。

 ジェット音。

 銃声。

 甲高い金属音。

 新たな痛みはなかった。

「また、随分と。」

 若い男の声。

 聞き覚えはあった。

「やられちゃいましたね。」

 無線で何度か。

 銃声と金属音が何度か響く。

「・・・さて。」

 ようやく振り返る。

 青白く輝く鎧。

 大きな盾。

 スコープのモニターに、それ以上に目立つのは、光。

 羽の様な光が見える。

「随分、お世話になったようだ。」

 剣を抜く。

 小ぶりの片手剣は、青白い霧を纏っている。

 と。

 雪原に不気味な笑い声が響く。

 言わば、場違いな。

 言わば、不気味なほど似合う。

 そして、それは雪原から湧き出した。

 両手を剣と化し、椅子に固定された、召喚されしもの。

「イシス・・・」

 呟きは盾の持ち主の口から漏れた。

 見ると、少し離れた場所に杖を構えた人影が見える。

 彼女が召喚主のようだ。

 もう一人。

 盾と片手剣を構えて走ってくる。

「黒い騎士殿か・・・」

 何故か、笑いを含んでいる。

「離れていてください。」

 顔をこちらに向ける。

 それでも、その盾は銃弾を弾き続ける。

「少し荒れそうだ。」

 コラの銃撃手と盾の持ち主が入れ替わる。

 召喚されたイシスが回り込む。

 そして。

 まず、盾の持ち主が吹き飛ばされた。

 立ち上がれずに、そのまま光となって上空に消える。

 銃弾が降りかかるが、全て盾に火花を散らして消える。

「あなたには、お世話になったようですね。」

 歩み寄る。

 後ずさる。

 追いつく。

 一撃。

「ま、お礼という事で。」

 剣を抜く。

 血が噴出し、光と共に天空に消える。

「さて。」

 イシスに向く。

 召喚主がイシスの影に入る。

 歩き出した。

「どちらから逝きますか?」

「両方」

 後ろから聞こえた。

 女性の声だ。

 振り返る暇はなかった。

 目の前に炎が吹き荒れ、巨大な岩が降り注ぐ。

 それで、終わりだった。

 後にはイシスも、召喚主もいなかった。

「はい、おしまい。大丈夫?」

 私の顔を覗き込む。

 幼い顔立ち。

 バレリーナの様な服。

 全てが戦場という、この場にそぐわない。

 が、彼女の右手の杖が、恐ろしい破壊力を持つ事は、今証明されている。

「帰ろ。みんな心配してるよ。」

 差し出された手を握り返した。


 
  

イダー 7

未分類


 イダー 7

 人影が走り出した。

 すぐに、奥から2つ。

 1つ目がホースと分かる頃、2つ目と3つ目が仲間でない事がわかった。

 金属質な輝き。

 装備や武器でなく、その者自身が金属質だ。

 雪の反射を受けて尚、黒い輝きを放つ。

 もう一人は、白銀。

 周りの雪より、白く凶悪に輝いて見えた。

 殺気の色。

 殺気の輝き。

 私がここに付いた時に感じた感覚がよみがえる。

 濃密な緊張感だ。

「お前は後方支援だ。」

 視界の隅で何かが光った。

 巨大な剣。

 いつの間にか、銃は私の手に戻っている。

「いいな、射程ギリギリから撃て。間違っても近寄るなよ。」

「私は、」

「わかったな。」

 緊張感が膨れ上がる。

 返事を確認する事なく、タリスクが走り出した。

 もっとも、返事が出来たかどうか。

「頼んだわよ。」

 声だけ残してエレンも走り出す。

 また、返事もできなかった。

 深呼吸を一つしてみるが落ち着くはずもなかった。

 ポケットを探る。

 大きな金属片に手があたる。

 握り締めて走った。

 

 銃声。

 怒号。

 すぐに『戦場』の音が聞こえ出した。

 金属が金属に激しくぶつかる音。

 殺気が弾ける。

 その中心へ、絶え間なく光が打ち込まれる。

 味方からも、敵からも。

 銃を構える。

 捕らえて、撃った。

 火花が散る。

 白銀の敵がこっちを向いた。

 モニターやセンサーを防護板で覆った「顔」。

 無表情なその「顔」が笑った、気がした。

 背筋に寒い、ここの空気よりも冷たい何かが駆け上る。

 震えながら、撃つ。

 効いていない事が分かっていても、撃たずには居れない。

 逃げろ、と言ったのは誰だったか。

 足が動かない。

 やがて。

 作動音が響く。

 白銀が更に大きくなる。

 ほんの数秒。

 それが、とても長く感じる。

 やがてそれは、固定砲台へと変化した。

 シージ。

 帝国の脅威的な威力を誇る、巨大な銃。

 自らを部品として使用するそれは、移動と引き換えに通常の銃とは比べ物にならない

破壊力を生む。

 そして、その銃口がこちらを向いた。

 光った。
 
 感じた瞬間、視界が回る。

 一撃で吹っ飛ばされた。

 誰かの声が聞こえる。

 ひどい耳鳴りのせいで、誰かは分からない。

「大丈夫です!」

 声になったかどうか。

 POTを取り出し、口に運ぶ。

 顔が動いた。

 転がる様に下がる。

 今、私がいた場所が轟音を立てて、爆発した。

 ポケットを探る。

 触った物を確認もせず取り出す。

 ここには、これしか入れていない。

 鍵だ。

「来て!」

 鍵の持ち手のマイクに叫ぶ。

 私の声は、HQに届いた。

 声紋が認証され、私の「機体」が転送される。

 巨大な、茶色の、鉄の人形。

 機甲装備。

 膝を付き、搭乗口を空けている。

『腕』を跳ぶ様に駆け上った。

 銃をシートの傍らに放り投げて、鍵を差し込み、回す。

 搭乗口が閉まり、身震いするように立ち上がった。 

 周りのモニターが灯をともし、周囲の状況を伝える。

 火気管制ON.。

 セイフティ解除。

 残弾確認。

 高速走行用空気圧確認。

 装甲損傷無し。

 そして。

 目標捕捉。

 スティックのトリガーボタンを押し込む。

 甲高い発射音が響く。

 人では到底持ち運べない、両腕の大口径の機銃が火を吹く。

 シージを構え、動けない白銀の兵にかわす術は無かった。

 それでも。

 撃ち続けた。

 私も。

 彼も。

 被弾箇所がモニターに表示される。

 装甲がどんどん削られていく。

 一瞬暗くなる。

 頭部に被弾し、センサーが途切れる。

 すぐに明かりを戻したモニターは、脱出を警告する。

「もう少し、持って!」

 そして。

 勝負がついた。

 その巨大な銃器とともに、雪にうずくまるのを、警告の赤い表示越しにみる。

 大きなため息とともに、力が抜ける。

 勝った。

 危なかった。

 警告の表示は、装甲が8割がた吹き飛んだ事を示している。

 と。

 激しい金属音がした。

 損傷が追加される。

 モニターに黒い敵が、大きく写っていた。

 槍を大きく振りかぶる。

 致命的な損傷の危険をブザーが知らせる。

 機甲の爆発に巻き込まれれば命はない。

 あわてて鍵を引き抜く。

 開きだした搭乗口から転がり出た。

 雪の中を転がる。

 目の前に、槍の穂先が突きつけられる。 

 ここでは捕虜なんて無い。

 倒すのみ。

 降伏は意味をなさない。

 銃を引き寄せ、構え、られなかった。

 横殴りの槍に、雪の中に飛ばされる。

 武器は、ない。

 
 
 

  
  

  

   

イダー 6

未分類


 イダー 6 

「引き金は引くんじゃねえ!絞るんだ!」

 無線から、タリスクの怒鳴り声が響く。

 打ち消す様に、トリガーを絞る。

 ガトリングガンが、けたたましい銃声をたてる。

「長い!もっと短く!長く撃ってもあたんねぇぞ!」

 敵がこっちを向く。

 それをかわす様に回り込む。

 雪が絡んで足が重い。

「遅いぞ!死ぬぞ!もっと早く!」

 鬼!

 叫びたくなるが、我慢して片膝で座る。

 肩付けで構える。

 撃つ。

 敵の表面に火花が上がる。

 確認するまもなく、立ち上がり走る。

 敵の後ろへ、後ろへ。

 再び片膝。

 向こうの方が早かった。

 周りの氷が砕け散る。

「ばかやろぅ!なにやってんだ!」

 かまわず撃った。

 両腕にガトリングガンを装備した、巨大な兵器が膝を折る。

 やがて、ゆっくりとその場に倒れた。

「お疲れ様~。帰ってらっしゃい。」

 振り返ると、エレンが小高い丘の上から手を振っている。

 手を振り替えして、歩く。

 坂道が、足にこたえた。

 それ以上に、タリスクの文句がこたえた。


「はい、お茶。お疲れ様。」

「ありがとう。」

 エレンが暖かいお茶をポットから入れてくれる。

 装備のおかげで寒くは無いが、見た目ここの景色は寒々しい。

 シェラカップから伝わる暖かさが嬉しい。

「あれじゃ、ダメだな。」

 タリスクが苦い顔をする。

 こちらは、スキットルボトルで酒だ。

「命がいくつあってもたらねぇ。動きが鈍いんだよ。」

 あおる。酒のせいか、苛立ちか、顔が赤い。

「大丈夫よ、まだ。」

 エレンが横からボトルをひったくる。

 自分のカップに入れた後、私のカップに少量注いだ。

「そのうち、上手くなるわ。」

 一口、あおる様に呑んで、返す。

「あら、美味しいじゃない。どんな苦いお酒かと思った。」

「うるせぇ。」

 ひったくる様にとりかえしてそのまま飲もうとする。

 苦い顔をする。

 ボトルは空になっていた。

「『下』から持ってきた、大事な酒を。」

 ギロッと睨み付けて、ポケットに押し込む。

 その手で煙草を取り出し、くわえた。

 ライターが金属音を立てて、火をともす。

「ホースは。あいつどこいった。」

「もうちょっと先に行くそうです。」

 お茶をすする。

 ふんわりと、お酒の香り。

 戦場という事を忘れそうな、ゆったりした空気が流れる。

「この辺りのは、物足りないそうです。」

「あの、馬鹿!」

 苦々しく煙を吐く。

 地吹雪に混じって、消えていった。

「あなたが思ってるより、ホースは強いわよ。」

 雪の上にエレンが腰を下ろす。

「心配ないわ。」

 杖を肩に立てかけ、カップを両手で包む。

   

イダー 5 ギルド

未分類


 頭が絞られるように重い。

 胃は砂を詰め込んだようだ。

 平衡感覚がうすれ、地面がゆっくりと波打っている。

 ダメージはあまりに大きかった。

 倒れたまま、周りを見渡す。

 それだけで、体力の大半を使った。

 タリスクが仰向けに転がっている。

 意識の確認をするまでも無い。

 完全に気を失っている。

 ホースは足を投げ出して座り込んでいる。

 頭を落とし、こちらも意識はなさそうだ。

「強い。」

 私はそのまま、頭を床に置いた。

 飛びそうな意識を、全身を支配する倦怠感がつなぎとめる。

 最悪の状態だった。

 このまま、気を失えればどれだけか楽だろうに。

 が、周りの状況が許してくれなかった。

 耳から離れた無線が何かを言っている。

 それさえ耳障りだった。

 それでも一応、耳に当てる。

「大丈夫ですか?」

 何を言ってるんだか。

 大丈夫なわけが無い。

 それほど敵は強かった。

「・・・だめです。」

 極めて正確な状況報告だ。

「壊滅です。」

 見渡した所、間違いない。

 その時、木の軋む音がした。

 そして、「勝者」が、「強大な敵」が姿を現す。

「起きてる?」

「・・・30%位は。」

「上等よ。あとの2人はKOね。」

 エレンの声が頭の上から降り注ぐ。

「強い・・・ですね。」

「ギルド『うわばみ』のマスターとしては、負けられないわね。」

 勝者は天使の笑みを投げてきた。

 無線の向こうから爆笑が聞こえてくる。

 あがらう術を持たない私は、無線を耳から引き抜いてそのままつっぷした。

「・・・勝負したつもりはないんですが。」

「もう少し寝たら?」

 エレンの声に恨めしそうな目を、ホースとタリスクに向ける。

「・・・あのイビキがなければ、寝れます。」 



 あの後、私は引きずられる様に発着場に駆け込んだ。

 装備を整えて旧発着場へ出撃。

 そのはずだったが、タリスクの一言で状況が変わった。

「よし、呑むぞ。」

 意味が分からなかった。

 確かに日は傾いて、夜の帳が下りようとしていた。

 しかし、備えられたゴーグルやスコープは夜間でも昼間と同じように戦闘が可能だ。

 そんな意見を述べる間もなく、発着場の一室へ引っ張り込まれる。

 エレンの力が強く、抵抗できなかった。

 発着場のいくつかの部屋は宿泊施設として、酒保として開放されている。

 ベットなどがあるわけではなく、毛布を借りて床に転がるだけだが雪が吹き付けるイダーでの野宿に

比べれば快適だ。

 そして。

 酒がある。

 軍に供される酒といえば、気付けにもなる強い酒と相場が決まっている。

 薄いのが呑みたければ割るしかない。

 それを許されれば。

 そして、「敵」はそれを許さなかった。

 小さなショットグラスは次第に大きくなる。

 3杯目にはマグカップに変わっていた。

 ふとみると、周りはジョッキだった。

 そのあたりから、記憶が怪しい。

「そういえば、あなた。」

 顔をむけるのが精一杯だった。

「ギルドは、どこ?」

 ギルド。

 軍から部隊としての編成を受けない私達は、気の合った者とグループを組む。

 それが部隊となるわけだが、仲間としてのつながりの方が大きい。

 その集団をギルドと呼ぶ。

 その規模はまちまちで、50人にもなる大きなギルドもあれば、数人の少人数のギルドもある。

「いえ・・・まだ・・・です・・。」    
 
 マグカップを、なんとか空にした。

 周りが化け物に見えた。

「あら、じゃあ。」

 軽々とジョッキを空にしたエレンが端末をとりだした。

 私のを。

「はい、加入申請っと。IDと、パスワードっと。だめよ、こんな分かりやすいパス。」

 なぜ、分かるのか。

 疑問に思う余裕は、とうにアルコールに支配されていた。

「で、こっち側で加入許可っと。え?」

 自分の端末を見たエレンが眉をひそめる。

「指紋認証?めんどくさいなぁ。」

 左手が持ち上げられた。

「は~い、認証終了!」

 端末にグッと人差し指が押し付けられる。

 抵抗は無駄と悟った。

「2人とも!新しいギルドメンバーのジェレミーさんでーす!仲良くするように!」

 タリスクとホースが顔を見合わせる。

「相変わらず」

 タリスクがジョッキの残り半分を一気に飲み干した。

「強引だな。」

「俺も、入った時の記憶は無いぜ。」

 ホースがジョッキを少しすする。

 まだ1杯目の半分だが、顔が赤い。

「はいはい、過ぎた事を言わない、言わない。」

 パンパンと手を叩いたエレンが私のカップに酒を注ぐ。

「では、新しいメンバーに!」

 エレンがジョッキを掲げる。

 釣られて私もカップを上げようとする。

 重い。

 握り締めていたはずのマグカップは、何故かジョッキに摩り替わっていた。

 私はこのとき、絶対に勝てない相手を知った。

「ようこそ、ギルド『うわばみ』へ!」

 頭が痛かった。

Menu

FC2カウンター

最新記事

プロフィール

penelope

Author:penelope
FC2ブログへようこそ!

カテゴリ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。