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イダー 5 ギルド

2008.12.09  *Edit 

 頭が絞られるように重い。

 胃は砂を詰め込んだようだ。

 平衡感覚がうすれ、地面がゆっくりと波打っている。

 ダメージはあまりに大きかった。

 倒れたまま、周りを見渡す。

 それだけで、体力の大半を使った。

 タリスクが仰向けに転がっている。

 意識の確認をするまでも無い。

 完全に気を失っている。

 ホースは足を投げ出して座り込んでいる。

 頭を落とし、こちらも意識はなさそうだ。

「強い。」

 私はそのまま、頭を床に置いた。

 飛びそうな意識を、全身を支配する倦怠感がつなぎとめる。

 最悪の状態だった。

 このまま、気を失えればどれだけか楽だろうに。

 が、周りの状況が許してくれなかった。

 耳から離れた無線が何かを言っている。

 それさえ耳障りだった。

 それでも一応、耳に当てる。

「大丈夫ですか?」

 何を言ってるんだか。

 大丈夫なわけが無い。

 それほど敵は強かった。

「・・・だめです。」

 極めて正確な状況報告だ。

「壊滅です。」

 見渡した所、間違いない。

 その時、木の軋む音がした。

 そして、「勝者」が、「強大な敵」が姿を現す。

「起きてる?」

「・・・30%位は。」

「上等よ。あとの2人はKOね。」

 エレンの声が頭の上から降り注ぐ。

「強い・・・ですね。」

「ギルド『うわばみ』のマスターとしては、負けられないわね。」

 勝者は天使の笑みを投げてきた。

 無線の向こうから爆笑が聞こえてくる。

 あがらう術を持たない私は、無線を耳から引き抜いてそのままつっぷした。

「・・・勝負したつもりはないんですが。」

「もう少し寝たら?」

 エレンの声に恨めしそうな目を、ホースとタリスクに向ける。

「・・・あのイビキがなければ、寝れます。」 



 あの後、私は引きずられる様に発着場に駆け込んだ。

 装備を整えて旧発着場へ出撃。

 そのはずだったが、タリスクの一言で状況が変わった。

「よし、呑むぞ。」

 意味が分からなかった。

 確かに日は傾いて、夜の帳が下りようとしていた。

 しかし、備えられたゴーグルやスコープは夜間でも昼間と同じように戦闘が可能だ。

 そんな意見を述べる間もなく、発着場の一室へ引っ張り込まれる。

 エレンの力が強く、抵抗できなかった。

 発着場のいくつかの部屋は宿泊施設として、酒保として開放されている。

 ベットなどがあるわけではなく、毛布を借りて床に転がるだけだが雪が吹き付けるイダーでの野宿に

比べれば快適だ。

 そして。

 酒がある。

 軍に供される酒といえば、気付けにもなる強い酒と相場が決まっている。

 薄いのが呑みたければ割るしかない。

 それを許されれば。

 そして、「敵」はそれを許さなかった。

 小さなショットグラスは次第に大きくなる。

 3杯目にはマグカップに変わっていた。

 ふとみると、周りはジョッキだった。

 そのあたりから、記憶が怪しい。

「そういえば、あなた。」

 顔をむけるのが精一杯だった。

「ギルドは、どこ?」

 ギルド。

 軍から部隊としての編成を受けない私達は、気の合った者とグループを組む。

 それが部隊となるわけだが、仲間としてのつながりの方が大きい。

 その集団をギルドと呼ぶ。

 その規模はまちまちで、50人にもなる大きなギルドもあれば、数人の少人数のギルドもある。

「いえ・・・まだ・・・です・・。」    
 
 マグカップを、なんとか空にした。

 周りが化け物に見えた。

「あら、じゃあ。」

 軽々とジョッキを空にしたエレンが端末をとりだした。

 私のを。

「はい、加入申請っと。IDと、パスワードっと。だめよ、こんな分かりやすいパス。」

 なぜ、分かるのか。

 疑問に思う余裕は、とうにアルコールに支配されていた。

「で、こっち側で加入許可っと。え?」

 自分の端末を見たエレンが眉をひそめる。

「指紋認証?めんどくさいなぁ。」

 左手が持ち上げられた。

「は~い、認証終了!」

 端末にグッと人差し指が押し付けられる。

 抵抗は無駄と悟った。

「2人とも!新しいギルドメンバーのジェレミーさんでーす!仲良くするように!」

 タリスクとホースが顔を見合わせる。

「相変わらず」

 タリスクがジョッキの残り半分を一気に飲み干した。

「強引だな。」

「俺も、入った時の記憶は無いぜ。」

 ホースがジョッキを少しすする。

 まだ1杯目の半分だが、顔が赤い。

「はいはい、過ぎた事を言わない、言わない。」

 パンパンと手を叩いたエレンが私のカップに酒を注ぐ。

「では、新しいメンバーに!」

 エレンがジョッキを掲げる。

 釣られて私もカップを上げようとする。

 重い。

 握り締めていたはずのマグカップは、何故かジョッキに摩り替わっていた。

 私はこのとき、絶対に勝てない相手を知った。

「ようこそ、ギルド『うわばみ』へ!」

 頭が痛かった。
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